ESMA、クラウドサービス提供業者への業務委託に関する諮問書を公表

2020.06.05作成

2020.06.05更新

ESMA、クラウドサービス提供業者への業務委託に関する諮問書を公表

ESMA

ライセンス・規制

企業及び当局にとっては業務委託に関連したリスクの認識等に寄与

欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は6月3日、クラウドサービス提供業者への業務委託指針に関する諮問書を公表した。[1]

ESMAが提示したクラウドサービス提供業者への業務委託指針は、金融市場関係者がクラウドサービス提供業者へ業務委託する際に適用される要件を示している。具体的には、金融機関各社が遵守すべき業務委託管理や文書化、モニタリング体制の構築に加え、業務委託前のデューデリジェンスの必要性を指摘している。また、業務委託及び再委託契約時に盛り込むべき最低限の項目や契約解除、取り扱いデータなどへのアクセスや検査権限についても指針を示しており、金融機関及び関係当局にとっては、外部企業への業務委託によって生じるリスクや課題の認識、モニタリングに寄与するとのことだ。

ESMAは同指針について、2017年2月に欧州銀行監督機構(European Banking Authority, EBA)が公表したクラウドサービス提供業者への業務委託に関する勧告と2019年2月に公表された修正版、及び2020年2月に欧州保険年金監督機構(European Insurance and Occupational Pensions Authority, EIOPA)が公表した指針と整合しているという。

諮問書の公表に際し、ESMAの局長を務めるSteven Maijoor氏は以下のようにコメントしている。

クラウドサービス提供業者に業務委託することは、金融機関やその顧客に対してコスト削減や業務効率、及び柔軟性の向上に繋がる可能性があります。一方で、多大なリスクや課題も生じ、特にデータ保護や情報セキュリティなどに関しては適切な対応が求められます。金融市場関係者は業務委託の際には慎重になるべきであり、クラウドサービス提供業者に全幅の信頼を寄せるのではなく、業者の動向及びセキュリティ対策を詳細にモニタリングすると共に、必要に応じて契約を解除できる体制を構築しなければなりません。

Steven Maijoor, Chair of ESMA - ESMAより引用

尚、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、ESMAは上場企業の報告書に関する声明文を公表したほか、ESMAはローン担保証券の格付け関連レポートを公表するなど、金融市場の安定化に向けた施策を矢継ぎ早に講じている。そして今回、クラウドサービス提供業者への業務委託指針に関し、同局はパブリックコンサルテーションを2020年9月1日まで実施する見通しだ。

official release 2020.06.05

出典元:

ニュースコメント

クラウドベースのソリューション開発が拡大

ESMAがクラウドサービス提供業者への業務委託に関して規制を講じることは、足元で多くの金融市場関係者が、クラウドベースのソリューション開発を拡大させていることが背景にあると見られる。例えば、リフィニティブがElektronとXCoreを統合させ、クラウドベースでリアルタイムでのプライシング情報の提供を強化している。また、ナスダック(Nasdaq)がクラウドベースのリスクモデリングサービスをリリースしているほか、CFH ClearingがYour Bourseと提携し、グーグルクラウド(Google Cloud)上で複数のコネクティビティオプションの提供を行う方針を明らかにした。今後も、革新的なテクノロジーの活用を試みる金融機関による、フィンテック企業との提携を通じた、コスト及び業務効率の改善に寄与するクラウドベースのソリューション開発の拡大が予想される。ESMAが打ち出した指針を基に、金融機関の顧客にとって安心・安全な市場環境が構築されることを期待したい。

プラナカンカン
筆者:プラナカンカン
執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー
著者詳細

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒

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