ESMA、市場のトレンド、リスク、脆弱性に関するレポートを公表

2020.02.21作成

2020.03.13更新

ESMA、市場のトレンド、リスク、脆弱性に関するレポートを公表

ESMA

マーケット情報

依然として高ボラティリティに付随したリスクを懸念

欧州証券市場監督局(The European Securities and Markets Authority)【以下、ESMAと称す】は2月19日、同局初となる市場のトレンド、リスク、脆弱性(Trends, Risks and Vulnerabilities)【以下、TRVと称す】に関するレポートを公表した。[1]

TRVレポートは、2020年1月1日より新ESA規則が施行されたことに伴い、ESMAにサステナブルファイナンスや個人投資家保護に関連した新たな任務が課されて以降、初のレポートになる。同局は市場が依然として地政学リスクに対し過度に反応していることを背景に、リスクが高水準で推移することに加え、経済が弱い成長に留まるとの認識を示している。リスクは安定的であるものの、特に証券市場及び個人投資家に対するリスクは高まっていると指摘している。

ESMAは金融市場に関連したリスクとして、市場リスクやクレジットリスク、個人投資家リスクなどを挙げている。具体的には、弱い経済成長や緩和的な金融政策、ブレグジットや米中貿易交渉などの不透明感が漂うなか、資産のバリュエーションは大幅に上昇したことから、2019年下半期は市場リスクが高水準で推移したと見ている。株式市場は高ボラティリティが継続する一方で、債券市場は投資家が利回りを求め、スプレッドがタイト化したという。また、市場は原油価格の急落や米国のレポ金利上昇などに対して過度に反応していると指摘している。

クレジットリスク及び流動性リスクも高水準を維持しているという。特にクレジットリスクに関しては、債券のフォーリンエンジェル(Fallen Angel、投資不適格債への格下げ)リスクが高まり、企業の債券クオリティの悪化が目立っているとのことだ。また市場リスクの高まりに伴い、個人投資家リスクは主要な投資商品全般にわたり広がっているという。概して個人投資家は慎重な姿勢を崩しておらず、大半が資産を銀行に預金している模様だ。ESMAは弱い経済成長見通しを持つと共に、新型コロナウイルス(COVID-19)やグローバル貿易交渉及びブレグジットに関連した不透明感が継続すると見ている。

ESMAは債券格下げリスクやビッグテック、ショートターミズム(短期志向)に関連したリスクに対しても注視していくという。同局は債券ファンドのフォーリンエンジェルの影響をシミュレーションしており、ファンドの運用パフォーマンスに与えるインパクトは限定的であるとのことだ。また広範な顧客ネットワークやデータ分析、高いブランド認知度を活かした金融サービスを提供するビッグテックの存在感が増しているという。ESMAはビッグテックによる市場集中度が高まるなか、ファイナンシャルスタビリティリスクを管理すべく、産業界と協働した規制フレームワークを講じる必要があると結論付けている。更に、同局は投資家とファンドマネージャー及び企業の経営層との報酬スキームが異なることにより、ショートターミズムが生じる要因になっている可能性があると見ている。

ESMAはサステナブルファイナンス関連レポートを公表するなど、欧州全域をカバーする統一的な規制フレームワークの構築を目指している。市場に混乱をもたらしうるこれらのリスクを限定すべく、同局が新たな規制策を講じると予想される。

official release 2020.02.21

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ニュースコメント

急速に進展する金融機関とテクノロジープロバイダーの融合

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プラナカンカン
筆者:プラナカンカン
執筆家&投資家&翻訳家&資産運用アドバイザー
著者詳細

国内及び外資系金融機関に15年弱勤務し、現在は独立。
執筆と翻訳は、海外FXを始めとする金融分野を専門とする。
慶應義塾大学卒

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