スウェーデン、銀行業界からイークローナに対する懸念が噴出
2021.01.07作成
2021.01.07更新
銀行預金の流出が金融システムの安定性を脅かす可能性
スウェーデンでは同国における中央銀行発行の独自仮想通貨(Central Bank Digital Currency)【以下、CBDCと称す】であるイークローナ(e-Krona)の影響に対する懸念が高まっている。
現在、スウェーデン国立銀行(Sveriges Riksbank)【以下、Riksbankと称す】はイークローナの採用を検討しており、同国の金融市場大臣であるPer Bolund氏によると、昨年から金融委員会が同仮想通貨に関するレビューを継続しているという。このレビューは2022年11月に完了する予定だが、国内の銀行業界はイークローナが既存の金融システムを破壊し得ることを懸念しているようだ。特にイークローナが預金の流出を招き、銀行の資金が不足する可能性があることが問題視されており、大手銀行SEB(Skandinaviska Enskilda Banken AB)のCFO(Chief Financial Officer)であるMasih Yazdi氏は、採算が取れない銀行が増加して金融システムの安定性を脅かす危険性があると述べた。
これに関してスウェーデン銀行協会(Swedish Bankers Association)の顧問であるRickard Eriksson氏は、Riksbankが資金不足を補うために貸し付けを行うか、銀行の預金を保護する必要があると主張している。しかしながら同氏は、Riksbankが対策を検討している様に見えないと批判しているようだ。加えて、Yazdi氏はブロックチェーンベースのイークローナが追跡可能であることを指摘し、プライバシーなどの観点で問題が生じる可能性があると言及した。
昨年10月、Riksbankの総裁であるStefan Ingves氏は、スウェーデン政府に通貨の法的概念を見直すよう要請しており、イークローナ発行に向けての準備を進めているが、最終的にどのような判断を下すのか、今後も同国での動きに注目していきたい。
official release 2021.01.06
ニュースコメント
CBDC開発で構造的課題に直面する欧州各国
昨年、中国でPBoCがデジタル人民元発行に向けて規制強化を実施するなど、主要国によるCBDCの採用が現実味を帯びてきており、その流れが欧州にも波及してきている。この動きを受け、ECBはCBDCに関するレポートを提出し、デジタルユーロの発行が避けられないものであると言及した。実際にイタリア銀行協会がCBDCの試験運用を計画しているのに加え、フランスでも同様の試みが進められているという。しかしながらスウェーデンの銀行業界が主張するように、中央銀行と市中銀行の関係をどう維持していくのかに関しては依然として明確な方針が示されていないようだ。中国人民銀行は銀行や決済サービスプロバイダーなどとパートナーシップを締結し、既存の金融システムを利用する形でデジタル人民元の導入を実現しようとしているが、ECBおよび欧州各国はどのような対応を取るのか、今後も同地域での動向を見守っていきたい。

米大学で出会った金融学に夢中になり、最終的にMBAを取得。大手総合電機メーカーで金融ソリューションの海外展開を担当し、業界に深く携わる。金融ライターとして独立後は、仮想通貨およびブロックチェーン、フィンテック、株式市場などに関する記事を中心に毎年500本以上執筆。投資のヒントになり得る国内外の最新動向をお届けします。
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